第6回に引き続き、ヨーロッパ思想を中心に、身体と社会の関係性を考えました。 代理出産や配偶子提供の問題で指摘されつつも議論されなかった「労働」や「搾取」の問題について深めていくための手がかりとなったのではないかと思います。
- 日時: 2011年6月15日(水)18:30~21:00
- 場所: 東京大学本郷キャンパス法文1号館215教室
- 報告者: 入江公康(いりえ・きみやす)大学非常勤講師。
社会思想・労働運動史研究など専攻。
著書『眠られぬ労働者たち 新しきサンディカの思考』(青土社)2008年 - 【報告概要】
<いま、「再生産」から考える>
現代資本主義はどんな特質を持っているのか。生産と労働の主体、あるいは消費と生活の主体とは、そこにあってどのように変貌しているのか。 「再生産」とは、生産と労働の背後にあって、あくまでもそれらと切り分けられながら、それらを可能ならしめる領域、もしくはプロセス――すなわち生活――として把握されている。 現在もそうあり続けていることに違いはないが、しかしこれらの内容や、生産および労働とそれがとる関係は、従来とはまた違った仕方で考えなければならなくなっていることも確かである。そして今までの議論は、生産に、労働にと重点を置いてきた が、むしろ逆に「再生産」の観点から資本主義を捉え返す観点がいっそう重要になってきているのではないか。 以上は、大量生産方式=フォーディズム以後、さらにはグローバル化や第三世界を考える際に不可欠の視点である。それらを再検討することは、この研究会のテーマでもある「身体の商品化」を、より広範な文脈に置き直して、そのバックグラウンドから考えることにも繋がるだろう。 本報告では、現在にいたるまでの歴史的経緯をたどりつつ、いま登場している新たな政治哲学的思潮なども紹介し、「ポストフォーディズム」といわれる資本主義の段階を、抽象と具体のレベルを重ね合わせながら話を進めた。また震災を踏まえての現状についても触れた。