イタリアの現状と背景

2016年時点

2004 年に成立したイタリアの生殖補助医療法は代理母を禁ずる。生まれてくる子どもの人格の 尊厳と基本的人権、特に身体的・精神的・実存的完全性への権利、そして家族への権利を侵害するからである。生命は伝えられ受け継がれる。有性種の生命の法則は雌雄の生物学的構造の 内に記されている。しかし身体(corpo)と精神(spirito)の合一(unitotalità)である人格においては、生物学的法則は本能的衝動を自由な選択と義務に高める知性と精神の統制下にある。選択と義 務は誠実な深い愛に根差した二人の心、知性、そして霊魂の精神的な諸力のすべてを巻き込み、その愛は生命の賜物である子どもに充満する。代理出産において、子どもは二人の人格から遺伝的遺産を受容する一方、他のもう一人の人格 である代理母から血液、栄養、そして子宮内部での活発なコミュニケーションを受容する。それは、自分の両親を知り、自分の両親によって自己を同定する子どもの権利を侵害する。また両親の一 致、両親と子どもの関係の緊密性を傷つけ、家族を構成する身体的・心理的・道徳的諸要素の間にも深刻な分裂をもたらす。

参考文献

  • 秋葉悦子、2005、『ヴァチカン・アカデミーの生命倫理』、知泉書館。
  • エリオ・スグレッチャ、秋葉悦子(訳)、2015、『人格主義生命倫理学総論』、知泉書館。