『こわれた絆ーー代理母は語る』

代理母たちの証言集『こわれた絆――代理母は語る』が出版されました。

ジェニファー・ラール/メリンダ・タンカード・リースト/レナーテ・クライン(編)

柳原良江(監訳)

生活書院

2022年10月25日

こわれた絆の表紙

画像をクリックすると、Amazonの本書紹介ページに行きます。

 

当会代表者が監訳を務めました。また当会の関係者が数名ほど、本書の翻訳に携わっております。

 【内容紹介】

これまで代理出産における当事者のうち、代理母や卵子ドナーの経験が語られることは、殆どありませんでした。一般的にこれらの当事者たちは、契約により事実を公にすることを禁じられているためです。

本書は代理母や卵子ドナーとなることで心や体に被害を被った方々が、自分と同じような苦しみを負う女性を増やさないよう、勇気を振り絞ってあげた声から成る証言集です。

本書に登場する代理母は、日本でも批判の多い「商業代理出産」の事例だけではありません。倫理的な問題が少ないと考えられる「無償代理出産」の事例も数多く掲載されています。無償代理出産の実施を通じて、依頼者を含め関わる全ての人々が、予期せぬ負の感情に襲われ、悩み苦しむ姿が描かれます。

原著共編者による「はじめに」や、監訳者による「解説」では、グローバル化した代理出産の実態が説明されます。男性に特化した市場の存在や、性的虐待目的で代理出産が利用された事例、無償代理出産に限定する代理出産合法化が、国外の商業代理出産利用を促進する現状が紹介されます。

「監訳者あとがき」では、グローバル市場における日本の位置づけの変化を論じています。

「解説」や「監訳者あとがき」など監訳者による書き下ろし章には、監訳者による調査研究結果も掲載されています。

たとえば厳しい条件のもと、無償の代理出産のみを容認するイギリスで、結果的に海外の商業代理出産利用が増加した事実が説明されます。またギリシャにおける無償の代理出産が、外国人の生殖アウトソーシングに利用される現状についても述べています。

日本で過去に実施された親族間の無償代理出産実施のその後や、国内で日本人女性が外国人富裕層の代理母となった事例など、日本の現状も説明しています。

今後、日本で代理出産が法的に容認された場合に、どのような問題が起こるのかを予測するうえで、重要な情報となるはずです。

 

【目次】

  • はじめに
  • 戻れない血の契約  キャシー(カナダ)
  • 人生最大の過ち  オクサナ(ジョージア)
  • 匿名はもうたくさん――私はどのようにして複数回卵子ドナーに仕立て上げられたか  マギー(米国)
  • 不完全な赤ちゃんを妊娠したら、使い捨てに  ブリトニー(米国)
  • 知る権利なし  ナターシャ(ロシア)
  • 哀しい家族のつながり──息子に再び会えるでしょうか?  オデット(オーストラリア)
  • 私の代理出産が、悪夢になったとき  デニース(米国)
  • 私は孵卵器  ナタリア(ロシア)
  • 利用されだまされ、経済的にも破綻して、打ちのめされた  ケリー(米国)
  • 代理出産が家族をこわした  ロブ(オーストラリア)
  • 止まらない心の痛み  ウジュワラ、ディンピー、サララの経験(インド)
  • からだもこころも滅茶苦茶に  マリーアンヌ(英国)
  • 代理出産はビジネスである  エレナ(ルーマニア)
  • 張った乳房と張り裂けそうな心で、独り残されて  ミシェル(米国)
  • 「無私」のドナー  ヴィクトリア(ハンガリー)
  • 善意が人種差別と憎悪に出会うとき  トニ(米国)
  • おわりに
  • 謝辞
  • 文献一覧
  • 解説 世界の代理出産の概観
  • 監訳者あとがき
  • 訳者紹介

 

出版社による本書紹介ページ https://seikatsushoin.com/books/kowareta/

本問題に関心を持ち、こころよく翻訳作業を引き受けて下さった共訳者の方々に、この場を借りて深くお礼申し上げます。

 

追記

アマゾンウエブサイトには、コレクター商品として定価より高価な品が掲載されておりますが、現時点で本書に何らかのプレミアの付いた版は存在しておりません。