市民圏(The Civil Sphere)

 

基本となる文献はAlexanderの下記の本。

  • Jeffery C. Alexander, 2006, “The Civil Sphere”, Oxford University Press, New York.

日本語で最も詳しい論文は下記

  • 兼子諭、2014、「公共圏論のパースペクティブの刷新ーーアレグザンダー「市民圏」論の検討をもとにーー」、『社会学評論』、65(3)、pp.360-373.

フランスの現状と背景

2016年時点

1994 年の生命倫理法により、「他者のための妊娠 la gestation pour compte d’autrui(代理出 産)」に関わる契約は無効(民法典)、代理出産を依頼したい人と代理母になろうとする人を仲介 する行為には刑罰が課される(刑法典)。代理出産が認められないのは、人の身分(ある母親の子 どもであるということ)や人体を当事者が勝手にやり取りすることは公序に反するという理由である。これらの規定は一定の歯止めとなっていると思われるが、代理出産してもらいたい人々の一部は、 代理出産できる国─―裁判例からはアメリカ合衆国、インド、ロシア、ウクライナなど─̶で行ってい るようだ。最近まで、外国でフランス人が依頼した代理出産によって生まれた子どもと依頼した人と の親子関係は、帰国後認められてこなかった。依頼者を親とする現地の出生証書を国内の身分 登記簿に転記することや、養子縁組ができなかったのだ。しかし、2014年に欧州人権裁判所が、フランスは子どもの私生活を尊重する権利を侵害していると判断し、この判決を受けて、2015 年に 破毀院(最高裁に相当)は、ロシアでの代理出産で生まれた子と依頼男性の父子関係を認めてい る。外国での代理出産がしやすくなったと受け止められることが懸念される。

参考文献

  • 小門穂、2015、『フランスの生命倫理法 生殖医療の用いられ方』、ナカニシヤ出版。

海外の生殖技術について

概況

  • 神里彩子・成澤光(編)、2008、『生殖補助医療:生命倫理と法―基本資料集3』、信山社。主要な国の法整備やその経緯について書かれている。現行法の資料としては古くなりつつあるが、各国の法整備に関する歴史的事項の基本的な把握にはとても有益。

アメリカ合衆国

  • 荻野美穂、2009、「代理出産の意味するもの」、『日本学報』、第28号、大阪大学大学院文学研究科日本学研究室。アメリカのフェミニズムにおける代理出産の認識枠組みを説明。
  • ケイン,エリザベス., 落合 恵子 (訳)、1993、『バースマザー ある代理母の手記』、共同通信社。(=Elizabeth Kane, 1988, “Birth Mother: The Story of America’s First Legal Surrogate Mother”, Harcourt Brace Jovanovich.)全米初の代理母としてメディアに登場し,代理出産のキャンペーンを行ったエリザベス・ケインの手記。周囲に代理出産ビジネスの広告塔として扱われた経緯や、出産後に,自らの代理出産を後悔した経緯が述べられる。ベビーM事件をきっかけに「代理母に反対する全米連合」に参加,代理出産禁止運動に身を投じる。なお本件に関するNYTimesの記事はここから閲覧できる。
  • チェスラー、, 佐藤雅彦(訳)、1993、『代理母:ベビーM事件の教訓』、平凡社。(=Chesler, Phyllis., 1988, ”Sacred Bond: The Legacy of Baby M”, Crown.) ベビーM事件の詳細な経緯を説明。
  • スパー、デボラ・L、椎野敦(訳)、2006、『ベビー・ビジネス』、ランダムハウス講談社。(=Spar, Debora L., 2006, ”The Baby Business: How Money, Science, and Politics Drive the Commerce of Conception” Harvard Business Press.) 米国の生殖技術マーケットの現状を中心に経済学者の視点から説明。1990年代以降、体外受精型が普及して確立した代理出産マーケットの概況を説明。現在の生殖技術マーケットの基本形が把握できる。
  • Markens, Suzan., 2007, “Surrogate Motherhood: and the Politics of Reproduction”, University of California Press. 米国の代理出産に関する政治的言説を丁寧に追い、米国内における代理出産の認識枠組みが説明される。これを読むと、日本で繰り返された代理出産言説の一部が、ほぼ米国からの輸入である事が分かる。しかし他方で日本には輸入されなかった、或いは無視された言説もあり、文化的な違いが見えるのは興味深い。

イギリス

  • Mulkay, Michael, 1997, “The Embryo Research Debate: Science and the Politics of Reproduction”, Cambridge University Press. IVF発明後のイギリスの議論を追った本。Warnock report への反応や胚研究に関する政治、文化的側面について。人間の生殖技術に関する問題が取り上げられる際の特徴は、この時期からかわりない様に思える。

フランス

  • 小門穂、2015、『フランスの生命倫理法 生殖医療の用いられ方』、ナカニシヤ出版。フランスの状況を把握する上で基本的な一冊。

東アジア

  • 渕上恭子、2008、「「シバジ」考――韓国朝鮮における代理母出産の民族学的研究――」、『哲学』、119号、三田哲学会。韓国朝鮮において貴族が実施していた代理母制度「シバジ」の説明。近代化以降廃止された。
  • 柳原良江、2011、「代理出産における倫理的問題のありか一その歴史と展開の分析から一」、『生命倫理』21号、12-21頁。東アジアの古典的代理出産の説明。渕上恭子さんの「シバジ」に関する議論の紹介、中国の典妻、祖妻、日本の妾奉公など、かつて東アジアに存在した、子供を得る目的で女性を貸し借りする制度の説明。
  • 柳原良江、2015、「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス──使い捨てられる女性たち──」、『世界』、岩波書店。アメリカの卵子提供の現状を中心に、海外での日本人による卵子売買について。卵子提供において、卵子売買市場で明らかにされてこなかった健康リスクの可能性や、日本と米国の卵子提供の値段の違いなど。

文化社会学(Cultural Sociology)

以下は、代理出産や卵子提供などの生殖技術とは関係はなく、文化表象の社会学的な分析に関連する文献です。


代表・柳原の文化表象分析では、以下の論文に説明した理解を基にアレグザンダー学派またはイェール学派による立場から文化表象を「社会学」の枠組みで分析しています。なお日本で現在「カルチュラル・ソシオロジー」全般を詳しく扱っている社会学者としては佐藤成基さんがいます。またアレグザンダー学派を始めカルチュラル・ソシオロジー内の学派分類も佐藤成基さんの論文に詳しく掲載されています。(佐藤先生は理論社会学者で、文化社会学のHPはこちらです)。

  • 柳原良江、2016、「カルチュラル・ソシオロジーの系譜と構造解釈学派――質的研究における理論枠組み要請への応答として――日本社会学理論学会」、『現代社会学理論研究』、第10号、102頁~114頁。
     上記論文で用いた論文の一覧
  • 赤川学,1999,『セクシュアリティの歴史社会学』勁草書房.
  • ――――,2009、「言説分析は、社会調査の手法たりえるか」,『社会と調査』,第三号,52-58頁,社会調査会.
  • Alexander, Jeffrey C. & Bernhard Giesen, 1987, “From Reduction to Linkage: The long View of the Micro-Macro Debate”, The Micro-macro Link, Berkeley: University of California Press.( =1998、内田健・圓岡偉男訳「序章 還元からリンケージへ――ミクロ‐マクロ論争史をふりかえって」、『ミクロ‐マクロ・リンクの社会理論』新泉社.)
  • Alexander,Jeffrey C., 1990, “Analytic Debates: Understanding the Relative Autonomy of Culture”, Culture and Society, New York: Cambridge University Pres.
  • ――――, 2003, The Meanings of Social Life: A Cultural Sociology, New York: Oxford
  • ――――, 2005, “Why Cultural Sociology Is Not ‘Idealist’: A Reply to McLennan”, Theory, Culture & Society, 22(19).
  • Alexander, Jeffrey C., Ronald Jacobs, & Philip Smith, 2012,“Introduction: Cultural Sociology Today” , Jeffrey C.Alexander, Ronald Jacobs & Philip Smith (eds.), The Oxford Handbook of Cultural Sociology, New York: Oxford University Press.
  • Back, Les, Andy Bennett, Laura Desfor Edles, Margaret Gibson, David Inglis, Ronald Jacobs & Ian Woodward, 2012, Cultural Sociology: An Introduction, West Sussex: Wiley-Blackwell.
  • Geertz, Clifford, 1973, Interpretation of Cultures 2, New York: Basic Books.
  • Cordero, Rodrigo, Francisco Carballo & José Ossandón, 2008, “Performing Cultural Sociology: A Conversation with Jeffrey Alexander,” European Journal of Social Theory, 11(4): 523–542.
  • Emirbayer, Mustafa, 2004, “The Alexander School of Cultural Sociology”, Thesis Eleven, 79:5-15.
  • Hays, Sharon, 1994, “Structure and Agency and the Sticky Problem of Culture”, Sociological Theory, 12: 57-72.
  • Hall, John R, Laura Grindstaff, & Ming-Chang Lo, 2010, “Introduction: Culture, lifeworlds, and globalization”, Handbook of Cultural Sociology, Routledge.
  • Inglis, David, Andrew Blackie & Robin Wagner-Pacifici, 2007, “Editorial: Sociology,Culture and the 21st Century”, Cultural Sociology, 1(1):5-22.
  • 井上俊・長谷正人,2010,『文化社会学入門――テーマとツール』ミネルヴァ書房.
  • 亀山佳明、「文化社会学」、日本大百科全書(ニッポニカ)、(2015年1月5日取得、https://kotobank.jp/dictionary/nipponica/)
  • Lamont, Michèle, 2000, The Dignity of Working Men: Morality and the Boundaries of Race, Class, and Immigration, Harvard University Press.
  • 前田泰樹・水川善文・岡田光弘,2007,『エスノメソドロジー――人々の実践から学ぶ』新曜社.
  • Marshall Battani, David R. Hall, and Rosemary Powers, 1997, “Culture’s structures: Making meaning in the public sphere”, Theory and Society, 26:781-812.
  • McLennan, Gregor, 2005, “The ‘New American Cultural Sociology’: An Appraisal”,  Theory, Culture & Society, 22(6): 19-29.
  • 大野道邦,2011,『可能性としての文化社会学:カルチュラル・ターンとディシプリン』世界思想社.
  • 佐藤健二・吉見俊哉,2007,『文化の社会学』有斐閣.
  • 佐藤成基,「文化社会学の課題――社会の文化理論へ向けて」,『社会志林』第56巻第4号2010,93-126.
  • 盛山和夫,2004,『社会調査法入門』有斐閣.
  • Smith, Philip, 1998, “The New American Cultural Sociology: an introduction”, The New American Cultural Sociology, Cambridge University Press, New York.
  • Smith, Philip & Alexander Riley, [2001] 2009, Cultural Theory: An Introduction,  Blackwell.
  • 鈴木聡志,2007,『会話分析・ディスコース分析』新曜社.
  • Swidler, Ann, 1986, “Culture in Action: Symbols and strategies”, American Sociological Review, 51 (April):273-286.
  • ――――, 2001, Talk of Love: How Culture Matters, The University Chicago press.
  • Tavory,Iddo & Ann Swidler, 2009, “Condom Semiotics: Meaning and Condom Use in Rural Malawi”, American Sociological Review, 74: 171-189.
  • Turner, Victor, 1982, From Ritual to Theatre: The Human Seriousness of Play, Performing Arts Journal Publications.

生殖技術と遺伝子改造

金森修、2005、『遺伝子改造』、勁草書房。

Allen Buchanan, Dan Brock, Norman Daniels & Daniel Wikler, 2000, From Chance to Choice, New York, Cambridge University Press. (金森修が『遺伝子改造』で触れた『偶然から選択へ』)

瀬戸山 晃一、2004、「遺伝子医療時代における倫理規範の再検討と法政策 ―生殖の自由・優生思想・遺伝子研究・遺伝子差別と平等・分配的正義」、『医療・生命と倫理・社会』、vol.3, pp.90-111. (『偶然から選択へ』の論点に関する議論)