「卵子の老化」関連

フィンレージの会の、鈴木さんより下記の文章を頂きました。


「卵子の老化」について思うこと

鈴木りょうこ
フィンレージの会ニューズレター 第117号(2012年10月13日発行)掲載

 

過日、フィンレージの会事務所にNHKの記者さんが来ました。今年2月に放映された『クローズアップ現代』と6月の『NHKスペシャル:産みたいのに産めない〜卵子老化の衝撃〜』の取材・制作に携わった女性です。このテーマへの感想や意見、今後の支援や啓発のあり方などについて話を、ということでした。

実は私自身は番組を観ていません(その後のレビューは読んでいますが)。もともとTVはほとんど観ないのと、このテーマだと観れば気持ちが乱れるだろうな、と思っていたからです。

しかし、番組を契機として「卵子の老化」という言葉はあたかも流行語(?)になったような気配もあり、記者の方にお話したことも含め、この件について少し思っていることを書きたいと思います。

 前述のように、「卵子老化」はなんだか社会事象、不妊の問題を表現するひとつのキーワードにもなった感があります。

9月13日付毎日新聞も、連載『こうのとり追って:第5部・考えよう妊娠、出産』で〈2 卵子の老化「知らなかった」〉という見出しの記事を掲載しています。本文には【もし、若いうちに卵子が老化すると知っていたら】【だが年齢が上がると、卵子が老化して、妊娠しにくくなる。そのことを斉藤医師(筆者注:国立生育医療センター不妊診療科医長)が患者に説明すると、ほとんどの患者が「知らなかった」と答えるという。】とあります。

加齢により妊孕力が低下するのは私にとっては常識でした。一般に35歳以上の妊娠は「高齢妊娠」と呼ばれ、受精卵の染色体異常が増加すること、また妊娠高血圧症候群(いわゆる妊娠中毒症)などの合併症のリスクや分娩時のリスクも高くなることなども、知識としてはありました。私の年代(1960年代生まれ)だと、多くの方がなんとなくではあってもこうした知識を持っていたのではと思います。実際、フィンレージの会でも、発足のころ(私が30代だったころ)は治療の区切りを「40歳(あるいは42歳)」にしていた方が多かったと記憶しています。「卵がとれない」「体外受精を繰り返しているが妊娠しない」と嘆く方も、多くは30代半ばでした。不妊専門医が「33歳とか35歳を過ぎると卵がガタッととれなくなるんだよね。だから治療を始めるならできるだけ早く来てほしい」と話していることも、よく話題になっていました。

しかしここ10年、特に最近は30代後半で結婚、40代で治療という方がとても多くなり、この嘆きもその世代の方から聴かれることが多くなりました(会員さんの平均年齢が現在はたぶん40代になっているであろうことも影響していますが)。

正直、42歳、43歳、あるいは45歳などの年齢の方のこうした嘆きを耳にしても、私はもう言うべき言葉がみつかりません。年齢から考えて、妊娠はかなり難しい。確率的に低い。体外受精を受けるにしても、それはダメモトくらいに考えないとできないかもしれない。またそれは子どもを得るためではなく、自身が納得するためかもしれない。そうやって少しずつ、自分の状況を呑みこんでいくしかないかもしれない……。

嘆かれている方には、たいていそんな話をしています。

 それはさておき、私は最近「卵子の老化」という言葉、表現に違和感を持つようになりました。

加齢による妊孕力の低下は、身体の摂理です。

日本人女性の閉経は平均で50〜51歳。前後10年は更年期ですから、一般には45歳からは更年期。ちなみに〈更年期〉をキーワードにネット検索をすると、「女性の卵巣の働きは30歳ぐらいをピークにゆるやかに低下し始める」「卵巣機能がストップするとやがて閉経」などの記述が多数出てきます。そう、正確には「卵子」だけが“老化”するのではなく、加齢で卵巣機能が低下するのですね。

 NHK記者さんに対し、同席したスタッフのNさんは「卵子老化という言葉には“人”が見えない」というニュアンスのことを伝えていました。私も同感です。卵子がただの細胞のように聞こえる。「卵子老化」という言葉、イメージが先行し、「なら卵子の若返りを」「若い女性の卵子をもらう」という感じに話が流れていきそうな危惧を抱きます。

また、NHK記者さんは「加齢による卵子の老化に苦しむ女性に、どのような支援を訴えればよいか」と問いかけられたのですが、この問いも何か変というか、ねじれがあるように感じます。

少なくとも私自身は「加齢による卵子の老化」に苦しんだのではない。「子どもができないこと」に苦しんだのです。課題は「子どもができないこと」であり、「卵子の老化」ではなかった。繰り返しますが、課題を「卵子の老化」としてしまうと、結局は前述のような「若返り」など、「vs加齢」「vs老化」といった科学的解決/技術的解決に陥ってしまうのでは、と。(ついでに言えば『加齢による不妊』もおかしな言葉だと思っています)

 体外受精や顕微授精が“あたりまえ”の不妊治療ワールド(?)に入り込むと、卵子や精子があたかも“ワタシ”から独立した—切り離された—“モノ”“細胞”のように思えてしまう/思わされてしまう、扱われてしまう/扱ってしまう……ことがあるように思います。

しかし、卵子や精子はまぎれもない“わたし”の一部。その“わたし”が愛しいと思う別の“人”と出逢い、そうして新しいいのち/人格が誕生する。うまく言えませんが、そうした大切な、いのちの“かけら”。

 不妊の悩み・苦しみは、とても人間的な悩みだと考えています。たくさんの感情を持ち、迷いながら生を営む人間=“わたし”丸ごとの悩み。体外受精や顕微授精は「科学」「技術」に過ぎず、この悩みを助ける「方法」を提供することはあっても、本質的な意味での「解決」「解消」を導いてくれるわけではありません。あたかも修理・交換ができるような感覚で卵子・精子を見つめること、あるいは「卵子老化」をキーワードに不妊を語ること―いってみれば科学的解決をめざすこと―は非常に危うい。それは、ともすれば“わたし”の人間性を損ね、また不妊の人間的な解決——それぞれが不妊を自分の人生の中でどう位置づけていくか——を見失うことになりはしないかと思うのです。

 今号のニューズレターではこの夏開催された「iCSi会議」「日本生殖看護学会」という2つの大きな会議の報告も掲載していますが、この会議でも「提供精子・卵子による妊娠」は大きなテーマでした。どちらの会議もそれ(提供精子・卵子)が自明の選択肢のように語られている印象があり、いまこの項を書いている私は、まずその大前提に疑問を投げかける作業も大切なのではと思い始めています。

不妊の「解決」を、「科学」から「人」の手―人間的な営みの中での取り組み―に取り戻すために。(すずき)

2018年3月2日共催シンポジウム報告

「Fear, Wonder, and Science:リプロダクティブ・バイオテクノロジー新時代における科学と社会」報告

2018年3月2日(金)17:30~20:30  於:東京ウィメンズプラザ・ホール

概要

本シンポジウムは2017年8月に出版された共著による『Fear, Wonder, and Science in the New Age of Reproductive Biotechnology』(生殖テクノロジー新時代の不安、驚異、科学)。の著者、スコット・ギルバート氏、クララ・ピントーコレイア両氏を招いて開催された。

本書は発生生物学、そして科学史についての膨大な知識と情報、そして類いまれな洞察を持つ両氏による一般向け(特に学生等)に向けた書籍であり、両氏の補完的・応答的な記述は、現代生殖技術をどう考えていけばよいのか、重要な視点を提供してくれている。ちなみに序文はダナ・ハラウェイ。邦訳の待たれる一冊。

Scott Gilbert, and Clara Pinto-Correia, Fear, Wonder, and Science: in the New Age of Reproductive Biotechnolog, Columbia Univ Pr, 2017/8/8

登壇者

◎スコット・ギルバート Scott F. Gilbert

米国の進化生物学者、歴史学者。その名を冠した『ギルバート発生生物学Developmental Biology』(メディカルサイエンスインターナショナル)は発生生物学の〝バイブル〟とさえ言われ、2019年現在、第10版を重ねる。他に『生態進化発生学―エコ‐エボ‐デボの夜明け Ecological Developmental Biology: Integrating Epigenetics, Medicine, and Evolution』(共著,東海大学出版会)も有名。

◎クララ・ピント-コレイア Clara Pinto-Correia

ポルトガル在住。発生生物学者、自然史家、科学史家、作家、ジャーナリストとしてポルトガル国内では有名である。邦訳は下記の『イブの卵』しかないが、『イブの卵』は17-18世紀に栄えた前成説の歴史を膨大な資料をもってたどった書として評価も高い。

Clara Pinto-Correia, 1997 The Ovary of Eve: Egg and Sperm and Preformation , University of Chicago Press. U.S.A=佐藤恵子訳『イブの卵—卵子と精子の前成説』白揚社,2003

◎鈴木良子(フィンレージの会)

「日本の生殖医療の歴史と現状報告」報告内容

コメンテーター

柘植あづみ(明治学院大学)

Chia-Ling Wu(台湾大学)

シンポジウム内容

ギルバート氏の講演タイトルは「精子伝説 LEGENDS of the SPERM」。受精という現象は、従来「億単位の精子が卵子に向かって競争(闘争)し、勝ち残った〝ヒーロー精子〟が卵子を手に入れる/卵子はヒーローのクエストの報酬、すなわち救いを待つ乙女/精子はドリルのように卵子に穴を開けて侵入する」というイメージで語られてきたが、これらは間違いであるとする。近年の発生生物学の知見により、受精—発生は、精子と卵子の段階的な相互作用で進むことが明らかになっている。たとえば、卵子およびその周辺細胞は精子を活性化させ、卵子へ誘導する。到達した精子は卵子に穴を空けて入り込むのではなく、卵子に寄り添い(このとき卵子もまた活性化する)、やがて卵子と融合していく。前述のような精子・卵子に対する間違ったメタファー(ヒーロー精子と乙女卵子)は文化的に作られたものである。さらに、着床も、胚と子宮、相互の協力によって進む。

ピント–コレイア氏の講演タイトルは「生殖技術と現実—奇跡はない!ART & Reality-There are no miracles!」。現状のART(体外受精・顕微授精)について、このままでいいのか、と投げかける。患者は「子が欲しい」「信じたい」と思うからこそクリニックに行く。しかしARTの妊娠率、出産率は特に大きく上がっておらず、データが虚偽の場合もある。リスクもある。不妊クリニックは巨大なビジネスとなっている。また〝優れた遺伝子〟という幻想を追うカップル(ノーベル賞男性の精子、ブロンド女性の卵子等)、代理出産の問題なども。特に代理出産は生物学的には自分の子と言えないのでは? 養子とどこが違うのだろうか?

コメンテーター・柘植氏の「不妊治療を受けても妊娠しないとき、患者は医師の想定通りに反応しない自分の身体が悪いかのような気持ちになる」「成功率が低いことや危険を知った上でなお不妊の人が生殖補助医療を受け入れるのはなぜだろう」という投げかけに対しては、ピント–コレイア氏は「自分を責めるのは世界共通。世俗的な言い方だが、いつでも『女のせい』。不妊も女のせい。エデンの園を追われたのもイブのせい。不妊の人は自分を〝異常〟と捉えてしまい、治療から降りられない。そうした負のスパイラル、そして技術の見直しの時期に来ている」とした。自身も数回の体外受精を経験、その後養子を迎えたピント–コレイア氏の話は、日本社会が不妊—生殖技術の「何を」を問題と捉えていけばよいのか、あらためて示唆したように思う。

Chia-Ling Wu呉嘉苓氏(台湾大学)は、スライドを用い、台湾における生殖技術の話題として「多胎妊娠 Multiplets’ Troble」「素晴らしき新家族 Brave New Family」を挙げた。日本では1996年に日本産科婦人科学会が、体外受精・顕微授精において移植する胚の数を原則3個以内とする会告を出した。台湾では2005年に台湾生殖医学会(Taiwan Society for Reproductive Medicine:TSRM)のガイドライン、また2007年(人工生殖法が成立した年)に国レベルのガイドラインが出されたが、その胚移植数は「4個以下」のため、双胎またはそれ以上の多胎妊娠が防げていない。女性と産まれる子の健康を脅かしている。もう一つの「素晴らしき新家族」はLGBTの家族形成である。台湾ではレズビアンカップルがドナー精子による人工授精によって、ゲイカップルが代理出産によって児を得るケースが出てきている。いずれも渡航生殖による。さらにシングル女性が生殖技術を利用する権利なども考えていかなければならない事柄だとした。

 


台湾に関する追加情報

*2019年5月24日TAIWAN TODAY 「台湾、アジアで初めて同性婚合法化へ」(2019年6月11日アクセス)

*2019年5月8日 毎日新聞「麗しの島から/台湾で急増する子育て中の同性カップル」(2019年6月11日アクセス)

なお、同シンポジウムは「ふぇみん」3186号(2018/05/05)5面「東京で生殖技術に関する講演会・シンポジウム 無批判に巨大化する不妊治療/科学も文化に影響される」で紹介されている。同3185号(2018/4/25)でクララ・ピント‐コレイア氏のインタビュー『「不妊は自然なこと」と性教育で』も掲載。インタビューの一部はこちらでも読める。

(文責:鈴木R)

日本の生殖技術の歴史と現状(シンポジウム報告内容)

2018年3月2日に開催された、本会共催シンポジウム「Fear, Wonder, and Science:リプロダクティブ・バイオテクノロジー新時代における科学と社会」に登壇なさった、フィンレージの会の鈴木良子さんによるパワーポイントの報告内容(PDF)を掲載します。

不妊治療を受けた立場から論じる、日本の不妊治療の現状への問題提起です。

資料へのリンクはこちら

 

『代理出産ーー繁殖階級の女?』上映会配布資料

映画『代理出産ーー繁殖階級の女?』上映会では、観客の皆様が、内容を理解する上での参考になるよう、代理出産に関する現状と問題点をまとめた資料を配布しております。

どなたでもご利用いただけますが、利用目的は研究・教育に限ります。ご利用の際は、必ず本会の資料であることを明記してください。

ここからダウンロードできます。

ロシアの現状

2017年12月現在

法律

ロシアでは、1995年に採択された家族法51条と53条で代理出産に関する言及がなされ、代理母の同意によって、「みなし親」(intended parents)は、出生証明書に記載されることが定められた。また最新の法では、新健康管理法の55条(new health care bill, article 55)で代理出産を含めた生殖補助技術(ART)と代理出産の利用について定めている。この新健康管理法を含め、ロシアのこれまでの法律は、有償・無償の別なく代理出産の実施は合法である。

近況

ロシアはかねてからヨーロッパ在住者の生殖アウトソーシング先として有名であった。近年になり、インドやタイ、ネパールなど、アメリカ人の主なアウトソーシング先であったアジア各国が代理出産を禁止したことに伴い、ロシアやウクライナ、ジョージアなど東欧の国々が、アメリカ人も対象とした、世界的な生殖アウトソーシングの場として知られるようになっている。

ロシアの代理母が受け取る報酬は、ロシアの平均的な教員の1年半分に相当し、金銭面で動機づけられたロシアの貧困女性が大挙して志願している。それは表面上は「同意」でありながらも、女性たちが「喜んで他人に身体を貸す」ことの「経済的な強制」だと問題視している。2

この現状に対し、かねてからロシアのキリスト教信者の殆どが属するロシア正教会は、2013年には代理出産を「神への反抗」、「幸せファシズム」などと強く批判しており、同年に議会でも禁止法案が検討されてきた。3 とりわけ商業的代理出産は厳しく批判されている。2014年にロシア連邦議会下院「家族・女性・子供委員会」委員長は、部分的に代理出産を容認するものの、商業的代理出産は禁止すべきとの見解を示している。

代理出産の禁止を求める議論は2017年3月に再燃し、禁止法が再検討され、4 2017年11月には、代理出産をロシア国内で禁止されている売春に例えた上で、Anton Belyakov上院議員が禁止法案を提出した。5、6

*付記

2018年1月23日に放送されたTV番組『ミヤネ屋』や、雑誌『婦人公論』2018年2月13日号では、丸岡氏は代理母がクリスチャンである事に言及し、宗教観ゆえに代理母になったことを暗示しているが、ロシア人代理母がクリスチャンであることは、彼女が宗教的理由から代理母を引き受けることを説明する根拠とはならない。

ロシアのクリスチャンの96%以上を占めるロシア正教会は、代理出産そのものを強く批判しており、政府に禁止を求めている。またロシアのクリスチャンには1.6%のカトリックも含まれるが、周知の様にカトリックは、人工授精はもちろんあらゆる生殖技術を、長らく批判し続けている。近年では、体外受精を発明したエドワーズ博士へのノーベル賞授与に対し、ローマ教皇が不快感を示したことが記憶に新しい。

 

1 https://www.huffingtonpost.com/entry/surrogacy-ukraine-russia-georgia-czech-republic_us_595fa776e4b02e9bdb0c2b47 (2018年2月24日訪問)

2 ‘Mutiny against God’: Surrogacy in Russia thrives thanks to lack of regulation, published on Nov 28, 2017, https://www.lifesitenews.com/news/mutiny-against-god-surrogacy-in-russia-thrives-thanks-to-lack-of-regulation (2018年1月31日訪問)

3 Russian Lawmaker Proposes Ban on Commercial Surrogate Motherhood ”The Moscow times”, issued on April 24 2014. https://themoscowtimes.com/news/russian-lawmaker-proposes-ban-on-commercial-surrogate-motherhood-34637 (2018年1月31日訪問)

4 Bill banning surrogacy reaches Russian lower house of parliament published on March 27, 2017. http://www.rapsinews.com/legislation_news/20170327/278106535.html

(2018年1月31日訪問)

5  Russia Considers Ban on ‘Immoral’ Commercial Surrogacy Industry, published on Nov. 23, 2017

https://www.newsdeeply.com/womenandgirls/articles/2017/11/23/russia-considers-ban-on-immoral-commercial-surrogacy-industry (2018年1月31日訪問)

6 Russian surrogacy, controversial and unregulated, published on 24 Nov 2017

https://www.bioedge.org/bioethics/russian-surrogacy-controversial-and-unregulated/12528 (2018年2月10日訪問)

【参考文献】

  •  E. Scott Sills (ed), 2016, Handbook of Gestational Surrogacy: International Clinical Practice and Policy Issues, Cambridge University Press.

国内各種機関の声明文、判決文、その他関連団体

日本学術会議報告書 (2008年4月8日)

「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題―社会的合意に向けて―」リンク
代理出産は原則禁止。例外的な試行のみ認める。

厚生労働省
「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」

厚生科学審議会生殖補助医療部会による報告書。2003年5月21日発表。
代理出産(本報告書では代理懐胎の記述)は禁止と結論。リンク

2003年に実施された世論調査の結果はこちら。のちに日本学術会議が実施したシンポジウムでは、登壇者により調査のワーディングに問題があると批判されたが、本調査結果がマス・メディアに掲載された当時は、しばしば日本人の考え方に変化が生じていることの証として用いられた。

日本産婦人科学会

倫理に関する会告一覧 リンク
代理出産は、2003年4月「代理懐胎に関する見解」会告にて禁止 リンク

日本弁護士連合会

生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言 2000年3月 リンク
胚の提供・代理母・借り腹(ホストマザー)を禁止。商業主義を禁止し、違反に対しては刑罰を科すことを提言する

品川事件(TVタレント夫妻による米国への渡航生殖の事例)

最高裁判所第二小法廷平成19年3月23日判決  全文へのリンク
1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。
2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子とその子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供していたとしても,母子関係の成立は認められない。

SOSHIREN 女(わたし)のからだから

刑法・堕胎罪の撤廃を求めるフェミニストらによるグループ。
生殖技術に関する意見書・声明も出している。声明一覧へのリンク

第三者の関わる生殖技術について考える会

代理出産、卵子提供、非配偶者間人工授精(AID)について扱っている。AIDで生まれた人も参加し、それらの技術に批判的な意見を述べている。リンク

非配偶者間人工授精(AID)で生まれた人の自助グループ(DOG)

実際に生まれた人々によるグループ。慶応大学におけるAIDを含め、様々な形式のAIDで生まれた人が参加している。 リンク
*このグループに連絡を取りたい方は、本会代表の柳原にメールを出して頂ければ、先方におつなぎします。代表の連絡先はこちら

比較ジェンダー史研究会

ジェンダー法学のサイトに生殖補助医療・代理母に関する説明がある。法整備に関する流れが分かりやすくまとめられている。リンク

フィンレージの会 (日本)

不妊症患者の自助団体。代理出産に対する反対意見を述べる会員が何人か在籍している。ただし擁護論を述べる会員もおり、会としてまとまった意見を表明してはいない。リンク

babycom

妊娠・子育てに関する総合サイト。本サイト内に代理出産や卵子提供に関する特集が掲示されている。高齢者の妊娠に関する過去の調査結果もあり。リンク

代理母出産・借り腹、代理出産、代理懐胎の表記について

2018年初頭の丸岡いずみ氏に関する報道、また本人の手記では、他者の卵子を用いた受精卵で女性を着床・妊娠させ、生まれた子を得る《契約妊娠》を「代理母出産」と表記しています。現時点(2018年1月28日)でのマス・メディアの表記には、丸岡いずみ氏の表現にならい「代理母出産」とするメディアもあれば、「代理出産」とするメディアもあるなど、表記にブレがあります。

「代理出産」とは

日本では、アメリカで1976年に発明された、生まれた子を引き渡すことを前提に妊娠・出産を行う《契約妊娠》を「代理出産」と表記しています。これは英語”surrogacy”の日本語訳であり、学術専門家により、長らく用いられている表現です。この表記は日本で初めて開設された代理出産斡旋業「代理出産情報センター」(鷲見ゆき代表)や、1 自ら経営するクリニックで姉妹、母娘間で代理出産を実施した根津八紘医師による表記、衆議院議員野田聖子氏など、このような《契約妊娠》に対する立場の別を問わず、広く共通して用いられているものです。2

「代理出産」という表記の混乱

一方、大衆向けの雑誌記事では、人工授精を用い、遺伝的にも代理母の子である新生児を引き渡す代理出産を「代理出産」と呼ぶ一方、代理母以外の卵子(依頼者の卵や第三者からの提供卵)を体外受精させた受精卵の移植による代理出産を「代理母出産」と表記する例が見られます。しかし、この表現に対応する英語表記は存在していません。おそらく「代理母」(surrogate motherの訳)と、体外受精を用いる「ホスト型代理出産」(host surrogacyの訳)とを混在させた用語と考えられます。

「代理母出産」の大衆向けのマス・メディアにおける初出は、上述の斡旋業者、鷲見ゆき氏が自らの斡旋業の名称を「代理母出産情報センター」に変え、体外受精を伴う「代理母出産」と人工授精を用いる「代理出産」を区別して論じた事に端を発しています。3 この時期から、大衆向けのマス・メディアを中心に、「代理母出産」と「代理出産」を区別する表記が現れますが、その区別は必ずしも厳格ではなく、ときには反対の意味で(すなわち人工授精による代理出産を「代理母出産」、体外受精による代理出産を「代理出産」として)用いられることもありました。4 

このように「代理母出産」は、日本国内で曖昧な理解のまま流通する表記でありることから、現在ではこの問題に詳しい専門家の間では、用いられることはありません。一方、近年では娯楽向けのコンテンツの中で、国際的な用語はもちろん日本国内の専門用語も無視した形で「代理母出産」の表記が用いられています。しかし上述したように、この表記は正確性に欠けると共に、主に商業的代理出産の斡旋業者が利用する言葉であることから、客観的な議論を困難にする危険もはらんでいます。それゆえ本会では、この問題を公に論じる文脈では、「代理母出産」の表記を採用すべきではないと考えています。

「借り腹」という表現

また、体外受精を用いた契約妊娠(上記の区別に従えば『代理母出産』)に対しては、長らく「借り腹」という表記が用いられてきました。これは体外受精を用いた代理出産が、学術的には「宿主」を意味する”host”の用語を用いた「ホスト型代理出産」「ホストマザー型」と表記されていたことに由来する表記と考えられます。この表記は、大衆向けのメディアや専門家、行政の別を問わず、広く使用されていました。たとえば日本弁護士連合会は2000年の提言 で、また2003年の厚生労働省生殖補助医療部会の報告書でも、「借り腹」という表記が用いられています。6

「人工授精型代理出産」と「体外受精型代理出産」

研究者や専門家を中心に、米国で流通する用語の直訳として「伝統的代理出産」「従来型代理出産」や「ホスト型代理出産」「IVFサロガシー」など様々な表記が用いられる中、2009年に国際ジャーナリストの大野和基氏が「人工授精型代理出産」「体外受精型代理出産」の表記を産み出しました。7 この表記は「伝統的」「ホスト型」といった従来の表現がもたらす語弊を含まない、明確な表現であることから、それ以降、とりわけ人文系の学術的議論では、この用語が利用されるようになっています。

本会および本サイトでは、この方法がこれまで、さまざまな医療者や研究者はもとより、依頼者や代理母本人により「代理出産」の言葉で表記されてきた事実と、大野氏の発案を受けて代理出産の形態を明確に区別する用語が表れ、表記上の誤用の生じる懸念が消えたことを考慮し、用いられる技術の別を問わず、「生まれた子を引き渡す目的で行われる契約妊娠」を、従来通り「代理出産」と呼んでいます。

「代理懐胎」について

なお2000年代になると米国では、代理母と子が遺伝的に繋がっている人工授精型代理出産(”traditional surrogacy”)と、代理母が子と遺伝的に繋がらない体外授精型代理出産を区別するため、”gestational surrogacy”の用語が用いられるようになりました。8 それに伴い日本国内では、本用語の日本語訳として、しばしば「代理懐胎」の表記があてられ、これが現在まで、医療者を始め自然科学の領域を中心に、日本の学術的な議論でしばしば用いられています。

しかし一方で、2003年の厚労省部会報告の36頁「「代理懐胎(代理母・借り腹)は禁止する」の項 に見られるように日本の専門家団体や行政の間では「代理懐胎」を「人工授精型代理出産」(代理母)と「体外授精型代理出産」(借り腹)の両方を含めた”surrogacy”の訳として用いています。そのため日本国内では「代理懐胎」が、その英語訳である”gestational surrogacy”なのか、または英語の”surrogacy”にあたる意味なのかは、各自が文脈により判断しているのが現状です。このような状況も考慮し、本会および本サイトでは、語弊の生じる可能性の高い「代理懐胎」の表記もまた、その使用を控えております。

 


1.この日本初の代理出産斡旋業は、アメリカ人弁護士ノエル・キーンによる代理出産斡旋会社ICNY の東京事務所として開設されたものです。ノエル・キーンによる代理出産の発明についてはこのページを参照。
2.代理出産(surrogacy)に対する上記の定義(生まれた子を~契約妊娠)は、本会が定めたものではなく、これまで代理出産を論じる際に、英語圏の議論で長らく用いられてきた概念です。
3.初出は、雑誌『女性自身』1995年9月12日発行号の226-229頁。
4.たとえば『女性自身』、2002年3月12日発行、30頁。
5.日本弁護士連合会 生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言(2000年)リンク
6.厚生科学審議会生殖補助医療部会「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」(2003年)リンク
7.大野和基、2009、『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』、集英社新書。
8.Charles P., Kindregan, Jr. and Maureen McBrien. (2006) Assisted Reproductive Technology: A Lawyer’s Guide to Emerging Law and Science. Chicago: American Bar Association.
9.テキストはこちら

ニュース

【本ページで記載される日本語訳は全て粗訳ですので、正確な内容はご自身でお確かめ下さい】

日本

  • チャイナセンセーション第2部 変わる家族の形/2(その1) 代理出産、闇ビジネス:毎日新聞 
  • チャイナセンセーション第3部 国境を越える民/1(その2止) 代理出産「一族の決断」:毎日新聞 2016年6月18日 法のない日本で中国人富裕層が代理出産を実施、日本国籍を持つ子を得る。
  • 元日テレキャスター 丸岡いずみさん、代理母で長男誕生:産経ニュース 2018年1月23日 ロシアにおける商業的代理出産により男児をもうける。★注:「代理母出産」「代理出産」「代理懐胎」の表記について

ロシア

  • ロシア「非道徳的」として商業的代理出産の禁止を検討。2017年11月23日

  • 神への反抗:法整備の不在でロシアの代理出産は盛況。2017年11月28日
    生殖技術に関する法律不在の状態でロシアは「一種の生殖技術天国」、貧乏な女性たちが動員されている。代理母の報酬は14000ドル(約150万円)で、それは教員の平均年収の1年半分に相当。代理母たちの結婚生活はしばしば破綻し、夫のいない状態で子を養うために金が必要。
    ロシア正教会は激しく非難。代理出産を禁止する法律を繰り返し要求してきた。代理出産は「不自然で不道徳」「神への反抗」「契約と金、子供の押収を伴う”ハッピーファシズム”である」
    ロシア国内ではポップスター(タレント)の代理出産事例が明らかになったことを受けて議論が高まり、代理出産を完全に禁止する法案が提出されようとしている。その議員によれば、商業的代理出産は売春のようなものだ、と。
    ロシア正教会は、ポップスターの例を受け、このような例が国中に蔓延することがないように、私なら代理出産を禁止する。「悪例は伝染性がある」から。

    欧州

  • 左派フェミニストと保守的なカソリックが代理出産反対のため統合(2017年3月28日)リンク

中国

  • 第2子解禁の中国で大繁盛!村の女性の99%が従事「代理出産村」とは?2015.01.16 日刊サイゾー 女児であれば中絶し男児が生まれるまで人工授精で代理出産。また期間を定めた性交による代理出産も。つまり韓国のシバジ型、中国の典妻型それぞれの復活。

カンボジア

シンガポール

  • より多くのシンガポール人が代理出産サービスを捜す DEC 31, 2017
     ゲイのシンガポール人医師が、アメリカの代理出産で得た子(4歳)の養子縁組を却下される。シンガポールは代理出産を容認しておらず、近年、多くのカップルが海外で代理出産を実施。この数年で倍増。昨年、シンガポール人による、ある業者への問い合わせは100件を超えた。その内訳はヘテロカップル50%、ゲイカップル30%、シングル男性20%。

概況