映画『卵子提供』上映会感想
第13回上映会までに参加者から寄せられた感想から抜粋したものを紹介します。
- 卵子提供をした後の長期的なリスクは「ない」と思っていたが、「ない」のではなく研究がされてないだけということがよく分かった。驚いた。日本でも一般にスタートしている。進めるならば、急いで長期的研究の仕組みを作るべきだ。[31~45歳、女性]
- 卵子提供にかんする一番の問題は、提供者のリスクが「ある」ことよりも、「知られていない」ことだと思った。技術的に可能であるということリスクが無いことはまったく別のことであるのに、後者はポジティヴな宣伝によってかき消されているのだと知った。[25~30歳、女性]
- 代理出産は問題だと思っていましたが、卵子提供のことはよく知らず深く考えていませんでした。この映画を各大学で上映し若い人たちに観て欲しいし国会議員も観て勉強してほしいです。女性を「産む性」に限定し、その身体を生殖に利用してはならないと強く思います。[31~45歳、女性]
- 卵子提供により被害を受けた方の実態を知ってショックでした。今も昔も(特に若い)女性の性が商品化されていることに、憤りを感じましたし、フェミニズム運動があっても、やはり女性が収奪され続けていることに暗澹たる思いでした。もっと、女性たち、男も入れて話したいです。[31~45歳、女性]
- 卵子提供にリスクがあることを、向井亜紀(タレント、有償の代理出産で2児を得る)や野田聖子(国会議員、有償の卵子提供で50代で出産)のドキュメントが流れたような時間帯に、広く一般に放送する機会がないものかと思う。まずは、リスクがあることを知ってもらうこと。あとはおのずと皆が判断すればいい。 一般不妊治療まで否定するつもりはない。本人の了解があればいいと思っているので。卵子提供のリスクを声高に言うと、一般不妊治療までとどこおってしまうのか?いや、卵子提供のリスクを声高に言うことで、一般不妊治療でも医療的なリスクは同じなので、一般不妊治療においても、もう少し、可視化されることにつながればいい。一般不妊治療を皆が真剣に考えることにつながれば。[31~45歳、女性]
- 卵子提供(摘出)により、これほど提供者に負担/リスクがあることを初めて知りました。ショックです!それでも採取されているのは、まさに「搾取」です。貧困層の女性がたとえリスクを知りながらも、「お金」のためにリスクを引き受けてしまうことを、非常に危惧するようになりました。もう一つ、卵子提供で生まれた子供たちの声はどうなっているのか。[31~45歳/男性]
- 討論でも挙がっていましたが、医療のグローバル化が進むにつれて企業の介入や生殖の商品化がさらに展開していくことに恐怖を覚えた。「技術の社会的利用」についてメディアも多くとり上げ国民に問題提起をしてほしいと思った。[31~45歳、女性]
- 技術的に可能であることは行うべきだという思考が強い中で、提供者が人間であることを意図的に無視してしまっている。こうしたことは看護や医学の教育でも触れられない。もっとこうしたことを教育すると同時に非専門家に対しても知らせるべきと感じた。また、この問題は「人間の道具視」でもあるが、「善意」や「自己決定」の文脈に落とし込まれやすい。それを問い直すことも必要であると感じた。[46歳以上、男性]
- 女性だけの問題として取り上げるのではなく、「人はどう生きるのか」という社会の哲学・倫理も含めた、全人的問題・課題として考えたい。社会の中での教育の在り方も問題(体のこと、性のこと)。[46歳以上、女性]
- 生殖の商品化は、以前から危惧していました。今日のフィルムを見て、卵子提供者の健康リスクと公的機関の規制や監視がないことを初めて知りました。メディアでは無事に出産した例の報道や不妊治療促進が主です。データの公表を求めたいです。また、このまま進めば「出自」の意味が大きく変化していくでしょう。親子の概念も著しく変化していくことを改めて考えさせられました。[46歳以上、男性]
- 生殖技術にまつわる問題は、親と子の複雑化する家族関係の問題が主だと考えていた。一方で卵子や精子の提供者に関しては、いずれも匿名性が強く、彼らの健康面を考慮するどころか、提供後は報酬を得て問題を放棄しているような印象さえ持っていた。しかし、本日のドキュメンタリーを観て、その匿名性が、彼らの声を押し殺して、「人を助けたい」という美徳へと丸めこまれていたのだと感じた。質疑応答で、ドキュメンタリーの内容が事実すべてだというのは誤解だという意見もあったが、私のように卵子提供者に思いを馳せたことのない者にとっては、考えるきっかけを得ることができた。ありがとうございました。[18~24歳、女性]
- 女性にとって“人助け”という面が大切なのは身体的にも精神的にも負担が大きいからでしょうか?おそらく卵子提供をする側もされる側も、お金を介して卵子をやり取りすることに何かしらの罪悪感や後ろめたさがあって、だから“人助け”という言葉にすがっている気がしました。生まれてきた子どもにも商品として購入したと言うより善意のやり取りで得た生命だと言う方が伝えやすいからではないでしょうか。そこに業者がつけ込むすきがあるのでは、と思いました。[18~24歳、女性]
- 「女性」=「卵子」であるかのような母性主義、ファシズムが動員されている。人間(有用な卵子を生産する女性)が単なる手段としてのみ扱われていて、労働としても倫理的に許されない。まさに「産む機械」、卵子製造器であり、その人自身のヴァルネラビリティやケアは顧みられない。その人自身のことを第一に考え、尊重すべきであるが、卵子のほうが優先されているのに怒りを覚える。女性蔑視であり、女性の自己尊重の低さ(自分の身心を大事にしていない・思えていない)、そのように低くさせられている社会構造が基底にあると思う。 「人助けがしたい」というのも、それ以前に自分の存在価値を軽んじさせられる「女性」の地位の構造(若さ・再生産の称揚、性差別、経済的困難など)があって、そこにつけこみ利用され、だます語り口になっている。 似た問題が、子宮けいがんワクチンといわれている特定ウィルスワクチンの摂取問題にもあると思う。子宮けいがんウィルス感染リスクを含む男性との性交による様々なリスクやデメリットについての周知を欠いており、男性でなく女性に処置することが無差別に推進され、女性ががんリスクによって男性との性交を避けることが万一にもないよう、男性がいつでも女性と性交できるように、女性への若年期における接種をがむしゃらに進めているようですらある。医療と科学研究の両方とも本来の意味が失われている。[46歳~、性別不明]
- 得るものが多い映画でした。卵子提供者を主役として捉える視点の大切さを教えられました。日本の現状(親族、無償)を踏まえた日本版ドキュメンタリーが欲しくなりました。[46歳以上、女性]
- “不妊”は悩ましいことです。でも卵子提供は臓器売買と同じ。「女」であるからこその商品価値。不妊で悩む女性も、卵子提供する女性も、どちらも『女:田 性』であることが、大きな原因。悲しくて辛いです。日本も女性の貧困が進むなか、今後(いやすでに)このドキュメントのようになるのでしょうか…。[46歳以上、女性]
- 生殖医療に関しても、人権の観点からもっと議論される必要がある。しかし、それが行われないのは貧困や女性の社会的地位、雇用問題などと同様、日本社会の基本的な性格と結びついていると思う。そこから議論を行う必要があるかもしれない。表面的な経済優先に流れる理由が知りたい。実はあまりのショックに身体的に反応してしまい、気分が悪くなって途中から見られなかった。続きを是非見たいと思っているし、周りにもすすめたい。その機会があることを望みます。[31~45歳、女性]
- 情報が足りないどころではなく、まともな研究がないという話には耳を疑いました。私の欧米学問への期待は、あまりに盲目的な責任の丸投げであったと気付くきっかけを頂き、ありがたく思います。ペーパーウェア等といった単語はよく聞きますが、それでも経済がそこまで一人歩きをする自由を確立させていたことを、情報化社会に暮らしながら、今回まで発見するに至らなかったことに、改めて恐怖を覚えます。[18~24歳、男性]
- 提供者は善意で提供を行うが、医師たちはビジネスで行う。このことによる意識の違いが、女性の健康をないがしろにしているということにショックを受けた。日本の原子力ムラにも近い、利点のみを強調して、リスクを隠すという狂った価値観が形成されている。んー、超資本主義なアメリカだからこそ、ここまで重大なレベルになるまで放ってかれていたのかな…?[18~24歳、男性]
- 女性同士の収奪構造もそうなのだが、最近日本でも同性カップルやヘテロでも非婚のカップルも、子どもを持つために生殖技術を使いたいという意見をよく聞く。その時強調されるのは「新しい家族の形」というような美しい話なのだけれども、第三者がからむ以外に、何が新しく、第三者や生まれた子どもの権利はどう守られるのか、ほとんど一緒に話されることがないのが気になる。今回も「同性カップルの為」の人助けという話があったのは、一つのポイントだと思った。法律婚で専業主婦家庭でないと利用が難しい養子制度等の改革とあわせて議論されてほしい。[31~45歳、女性]
- 医療者として観賞させていただきました。不妊治療者ではなく提供者に関するリスク・被害を、恥ずかしながら存じませんでした。今後、国内で同様のことが起こりうることが、いかに問題であるかを、提起していかなければならないと感じました。[年齢不明、女性]
- 学生であり、お金に困ることや医療従事者を目指すものとして卵子提供に特に反対意見はありませんでした。しかしDVDを観て、あまりに恐ろしさにゾッとしました。こんなにも、命を落とすところまで危険な体験をした人がいるのに、全く制度やリスクの証明がされていないこと、医師、スタッフの卑怯さ、不誠実さに驚きました。卵子提供・精子提供で被害にあったり悩んだりするのは生まれてきた子どもだと考えていましたが、提供者である女性の大きすぎるリスクを知り、絶対に私は卵子提供を行いたくないと感じました。 子どもを産めない人のために若い女性が卵子を提供しても、その女性が癌になったり卵巣を摘出して子どもが産めなくなってしまったりしたら、いったい何のための人助けなのか誰のためなのか、全く分からなくなってしまう。 卵子提供は賛成としている人は、一体何をもって、何の証拠があって安全だと言っているのか、よく考えて欲しい。卵子提供のリスクを示す文献が無かったがために、多くの若い女性が犠牲になってしまったかもわからないような状態で、私だったらもう何も信じられない。こういった不正な医療があると、医師は信用できなくなるし、誠実さ、人を助けたいと思う気持ちまでも疑われるので、危険な医療はやはり認められるべきではないと思います。[18~24歳、女性]
- 不妊治療をしている者なのですが、現行の治療の先に卵子提供を少し考えています。もっとよく考えていかなければいけないと考えさせられました。[31~45歳、女性]
- 私はこれまで十数回、自己卵での体外受精を受けたものの授かることができず、卵子提供を受けることを考え始めていますが、それについて少しでも情報を得たいと思い、今回参加しました。確かにTVやネットでは卵子提供を受ける側については多く扱っていますが、提供側についてはほとんど情報がなかったので、今回の映画で現状を知り、今後の自分の治療について考えさせられました。 映画やその後の専門家のトークでは卵子提供については全否定、絶対に認めません!というスタンスが伺えましたが、提供を受けたい側としては、何だかんだで需要と供給が成り立っているのだから、卵子提供をビジネスとして発展させていくのも大いにありだと考えます。自分が期待していた内容とは違っていましたが、いろいろな意見を聞けました。ありがとうございました。[31~45歳、女性]
- 私はMtF(つまり、生まれつき不妊症)ですが、子どもは養子か生殖機能を残して、レズビアンの人と育むと考えていました。また、子どもを持たなくても他に楽しいこと、やりがいのあること、生きがいはたくさんあると思っています。この問題の背景には、恋愛‐結婚‐出産‐家族といったジェンダーがあるので、そこの大本を問い直さなければならないと思います。[年齢不明、男性かつ女性]
- もし提供者に全てのリスクが説明され、後の健康へのフォローもしっかりされるのであればOKなのか、そうではなくてすべてバツなのか、考えています。[46歳以上、女性]
- 卵子提供者は「これは人助けだ」ということにしなければ到底耐えられるはずもないほど、心身ともに負担が大きいのだと思いました。そして、本質的な違和感がぬぐえないからこそ、「人助けだ」ということにするという思考停止状態に自らを追い込むのではないでしょうか。(提供者も依頼者も)女性たちの善意と心身をくいものにする業者には、憤りを覚えます。本当の意味での「人助け」としての卵子提供は、成立すると思われますか?[31~45歳、女性]