諏訪マタニティークリニックにおける代理懐胎事例の報道に対するコメント
2009年11月後半に一部メディアより、日本国内のクリニックにおいて、女性が遺伝的な孫を産む形での代理懐胎が実施されたことが報道されました。
本会は以下の見解から、親が孫を産む代理懐胎を遺憾な行為と捉えております。また代理懐胎の根底には、懐胎した当事者、依頼者、医療者の別に関わらず、女性の身体を「産む機械」と捉える眼差しが存在しております。このように女性の身体を貶める思想を普及させようとする当事者たちに対し、ここに強く批判の意を表明いたします。
本会は以下の見解から、親が孫を産む代理懐胎を遺憾な行為と捉えております。また代理懐胎の根底には、懐胎した当事者、依頼者、医療者の別に関わらず、女性の身体を「産む機械」と捉える眼差しが存在しております。このように女性の身体を貶める思想を普及させようとする当事者たちに対し、ここに強く批判の意を表明いたします。
- 身体的リスク
閉経した女性を妊娠・出産させる行為が一般化すれば、高齢者が身体的リスクを伴いながらも、妊娠・出産を選択せざるを得ないような環境が形成される。それは高いリスクを伴っていても、妊娠・出産目的のためには、健康な身体をエンハンスメント(身体改造)すべきとの発想を普及させる。 - 「産む機械」としての発想
年齢に関わらず女性を妊娠・出産させる行為は、女性が本来持つ身体的機能や、年齢と共に獲得する社会的役割やアイデンティティを捨象させ「産む機械」として捉える視点を強化する。このような認識が普及すれば、不妊女性はより強い社会的圧力を受け、当事者の苦しみはより強いものとなる。 - 母性イデオロギーの強化
女性が命を危険に晒して母性を貫くことを、あたかも自明の本能的な性質とみなす本件は、多くの女性に対し、母性の名の下に更なる自己犠牲を求める危険をもたらす。 - 家族関係の変化
今回の代理懐胎実施例では、母と娘の関係性のみが強調され、その他の家族関係は殆ど語られなかったが、そこには必ず精子の提供者(娘の夫)がおり、その提供者にも、実母や実父や実子など、懐胎者以外の家族関係がある。また懐胎者にも、娘以外の家族がいる場合は、そこにも家族関係が存在する。
一般的に家族間の代理懐胎は、家族以外の他者に影響が及ばないことを根拠として正当化されがちであるが、懐胎者と依頼者以外の家族メンバーに対し、代理懐胎で利益を得る当事者たちの一方的な語り以外に信頼できる報告がなされていない現状で、家族が何ら深刻な影響を被らないという言説に根拠は存在しない。 - 子どもの福祉
医療面での安全性が増し、子どもに対する医学的リスクが消失したり、法的に実子として扱われたりするなど、現在まで指摘されてきた問題点が克服されたとしても、第三者を介して生まれた事実は、実際に生まれた子に、多大な負担をもたらすことが予想される。現に日本では、法律婚の夫婦の間に非配偶者間人工授精により生まれた子たちが、成長してから自らの出自について悩む例が生じている。この現状から見ても、より親子関係の複雑化する代理懐胎において、生まれる子ども達が、深刻な悩みを抱えないと推測するのは困難である。
以上
2009年12月20日
代理出産を問い直す会
代理出産を問い直す会